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まだ何もない。

岡崎体育的『MUSIC VIDEO』論 その1

突然だが、お風呂に入っているとき、急に岡崎体育の『MUSIC VIDEO』が脳裏をよぎることとかあるだろう。いや、ないか。

 

そう、あのMUSIC VIDEOあるあるをMUSIC VIDEOという曲の中に詰め込み、それをそのままMUSIC VIDEOとしてMUSIC VIDEOのMUSIC VIDEOを公開したことで話題になったあの岡崎体育のMUSIC VIDEOのMUSIC VIDEOである。でも今回スポットを当てるのは、彼のMUSIC VIDEOのMUSIC VIDEOではなく、そのMUSIC VIDEOのもとになったMUSIC VIDEOという曲の方だ。

 

 

 

 

  

ふざけるのもそこそこにして、まじめに解説しよう。

 

まずはこちらを。

 


岡崎体育 『MUSIC VIDEO』Music Video

 

この曲はMVあるあるを詰め込んだ曲だが、みんな「あ~こういうMVね、あるあるw」と思いつつ、それが実際誰の何のMVだったか、本当は忘れているのではないだろうか。

 

そこで今回は、この歌詞を逐一拾い「きっとこのMVのことを歌っているんだな」という風に確認しながら、それぞれに当てはまるMVを紹介・解説していこうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

1.カメラ目線で歩きながら歌う

これこそMVあるあるだ。鉄板だけど一番安定感がある演出と言っても過言ではない。気にしていないだけで、結構多くのMVにこの演出が使われている。それは無駄な費用がかからないからである。

 

 


サカナクション - 蓮の花 (MUSIC VIDEO)

3分18秒あたりからが例のシーン。もう完全にこれではないだろうか。

岡崎体育はクールに歌っていて、ボーカルの山口さんははっちゃけているけども、よく見るとこの商店街の明かりがほとんど同じに見える。

 

 

 


きのこ帝国 - クロノスタシス(MV)

同じように「歩く」というテーマに則ったもので挙げるなら、きのこ帝国の『クロノスタシス』は外せないだろう。このMVなら1分44秒あたりからが歩きながら歌うシーン。カメラ目線ではないところもあるけども、岡崎体育の曲を聴いてこれを思い浮かべる人も少なからずいると思う。

ちなみにきのこ帝国は4ピースバンドだが、このMVの中では3分33秒あたりですれ違っている横の3人がメンバーである。

 

 

 


tricot "節約家" MV

他にも数ある「カメラ目線歩行歌唱MV」の中でこれをピックアップしたのは完全な個人的趣味である。サカナクションやtricotのMVのようにいくつものシーンを切り貼りしたものだと、それだけ編集の手間や撮影時間が長引いて大変である。でも結構見ごたえが出てくる。

 

 

 


Charisma.com「#hashdark」(short edit ver.)

アーティストは歩き続けなければならないし、カメラマンは常に後ろ歩きを強いられ、案外容易ではない撮影でもある。

 

 

 

2.急に横からメンバー出てくる

バンドなどのグループだと、(カメラ目線で)歩きながら歌うMVの中で、こういう演出はよくある。バンドなのにボーカルが一人で出演するのは、まず気まずい。

 

 


ONE OK ROCK - C.h.a.o.s.m.y.t.h. [Official Music Video]

2分19秒あたりからメンバーが出てくる。4分ちょうどあたりから演奏シーンが入るが、ここはもちろん電源など引いていない。

 

 

 


SEKAI NO OWARI「炎と森のカーニバル」

いつメンバー出てくるんだろう、って思っていたら最初からみんな出ちゃったパターンがこれ。どうでもいいけど、すごく寒そう。

 

 

 


One Direction - You & I (Official Video)

2分46秒あたりからみんなが出てくる。それまでは顔と体格が微妙に切り替わるという見てて変な心地になる演出。海外でも同じようなことはするが、CG技術などがすごいから安っぽく仕上がらない。

 

 

 

3.突然カメラを手で隠して次のカットで場所移動している

結構高度なテクニックが求められるこの演出。映画などでは「場面転換」などと呼ばれる。オーバーラップや暗転など容易な手段もある中で、あえてこの「手で隠す」のは最初から最後までの流れをスムーズに見せるためだ。もちろん手で隠すのは安っぽいから大体は他のいろんな手を使う。「手」だけに。

 

 


フレンズ「夜にダンス」

1分23秒あたりに最初の場面転換。ここでは女性の背中がキーとなる。2分43秒あたりでもボーカルのおかもとさんの手によってスパッと切り替わる。

こういった視聴者が予期せぬ場面転換は、メリハリを与え、見ている人に飽きさせないというメリットがある。何より、このMVにおいては3本の動画がうまく繋げられているということで、撮る側としては一続きで撮る必要はなく、3つの場所に分けて撮ればいいという負担軽減にもなっている。決して「逃げ」ではない。

 

 

 


【MV】どうすりゃいいぜ/藤岡みなみ&ザ・モローンズ

手で隠すことは、何も場所を移動するためだけではない。最初の切り替えは1分10秒のポスターに近づくところ。このシーンでは場所は変わっていないが、ザ・モローンズの2人と他のエキストラの方々を下の階へと移動させるためにこのような切り替えが行われている。同じように3分27秒のところでも、壁に近づいてシーンを繋げ、エキストラを瞬時に移動させている。

2分20秒で、藤岡みなみさんが手をカメラにかぶせるシーンがあるが、それが岡崎体育的な場面転換である。

 

 

 

4.倍速になって

映像を倍速にすることのメリットは、可愛らしさとコミカルな映像を生み出すことだ。倍速編集はアイドル系のMVに多い。

 

 


でんぱ組.inc「サクラあっぱれーしょん」MV

このMVの中では、移動の最中を倍速にしているが、これによってとても楽しそうな雰囲気を生み出し、見る人も楽しい気持ちにさせる。

 

 

 


植田真梨恵「わかんないのはいやだ」PV

周りの様子は倍速なのに歌は普通の速さで、それでいて口も同じように動いているという演出がこのMVでは用いられている。これは簡単なことで、撮るときは半分の速度で音楽を流し、それを歌わせ、あとで本来の曲の速さになるように映像を倍速処理するのだ。そうして作られたのがこのMVで、試しに0.5倍速で見てみてほしい。きっと植田さんの動きが普通に見えると思う。

 

 

 

5.スローになって

スロー映像。スロー再生というのは、実に多くのMVに使われている技術であり、この映像の良い点は、編集する側はスローにすることで元々の映像の尺をはるかに伸ばせることだ。ただ問題は、撮っている真っ最中は一瞬で過ぎるため、実際にスローにしてみないとどういう風に映っているのか分かりにくい点がある。

 

 


椎名林檎 - ありあまる富

スローにすることで落ちゆく物がとてもきれいに見える。スローは派手であれば派手であるほど、見ごたえがあるし面白い。どんなものでも新鮮味がある。

 

 

 


ELLEGARDEN「Salamander」Music Video

スローにしたMVで有名なこの曲も、曲の世界観を表現するのにスロー再生は一役買っている。スローにすることで激しさは抑えられるが、その分躍動感が生まれる。

特に1分50秒からのシンバルのうねりと震えが素晴らしい。肉眼ではほぼ見れない映像である。

 

 

 


OK Go – The One Moment – Official Video

スローモーションのMVで最も撮影時間が短いものがこちらのOK GoのThe One Momentで、それはわずかたったの4.2秒間の映像である。スローMV界では間違いなく殿堂入りを果たしている作品と言える。

 

 

 


Lorn - Acid Rain (Official Music Video)

「倍速になって」での植田真梨恵さんのMVは、撮影した映像を2倍速にしたものだと書いたが、LornのAcid RainのMVはそれの逆である。この映像はもともと曲を1.5倍速で流してそれに合わせて踊り、編集の時に曲を元の速さに戻したものである。

これも説明するより、1.5倍速で見てもらった方が言っていることが分かりやすい。

 

 

 

6.コマ撮りになっていく

コマ撮りは、今まで紹介した上のMVの演出の中で、もっとも演者・撮影者の双方に負担のかかる演出方法である。動画としてワンカットで撮るのではなく、何枚も撮った写真を繋げるようにして映像を作り出す。その大変さゆえに、見た人は「すごい」と思わざるを得ないし、アーティストなら挑戦してみたくなるものだったりする。

 

 


toe - グッドバイ PV / "Goodbye" Music Video

これが一般的なコマ撮りMV。繋がっているように撮るのは一苦労だ。

 

 

 


tricot『おもてなし』MV

こちらも。動きをスムーズに見せようとすればするほど、コマ数が増えるため、その分大変になることが分かる。

 

 

 


andymori "すごい速さ"

コマ撮りはとにかくその場でいるより、動いた方が見ている方も面白い。そして多少雑でも繋げてしまえばなんとかなったりする。

ちなみにandymoriのファンの方がこのMVを完全再現したものもYouTubeにあるので、そちらも見ていただくと面白いかもしれない。

 

 

 


水曜日のカンパネラ『ミツコ』

今まで上に挙げたコマ撮りMVの中でもとりわけ労力がすごそうなものが、水曜日のカンパネラの『ミツコ』のMVだ。1分12秒あたりから見ていただくと分かるだろうが、何枚もコマ撮りのように撮った写真をさらに並べながら撮るという二重のコマ撮りになっている。ただ、MV全体がコマ撮りにはなっておらず、この映像ではスローの演出も使われている。

 

 

 


OK Go - Obsession - Official Video

これも一応コマ撮りではある。ただ、OK Goだからもうやることなすこと「すごい」としか言いようがない。お金はきっとものすごくかかっていることだろう。

 

 

 

続きは「その2」で。